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価値のない処理石が溢れる時代へ

タイの宝石マーケットでは、さまざまな処理がされたありとあらゆるカラーストーンが大量に並んでいます。写真はいかにも価値ある本物に見える原石スタイル。処理石が蔓延するいま、お客様が高額な色石をご購入の際、鑑別書を確認するのは当然です。ですが、もともと処理検査をしていない鑑別会社もあり、大半の鑑別会社では処理検査をしていなくても、サファイアであれば鑑別書に「天然サファイア」と記載しています。これは違法ではないので、お客様が納得して購入することが大切です

 


ダイヤモンドに比べ、絶対的に採掘量が少ないはずの三大貴石、ルビー、サファイア、エメラルド。
サファイアをメインにする当店でさえ、ピアス、ネックレス、リング用に近い色の大粒を複数揃えるとしたら、どのぐらい月日がかかるかわかりません。
ところが、近年は大粒の貴石を使ったジュエリーが実店舗でもネット上でも、誰もが購入しやすくなっています。
近年採掘量が減っている貴石、それも美しい大粒を使ったジュエリーが、なぜ世の中にこんなに溢れているのでしょうか。
それは他の産業同様、宝石としては価値のないアクセサリー品質の天然石を美しくするさまざまな処理技術が、この業界でも年々進化しているからです。その技術革新により、美しい処理済みの宝石を大量生産することが可能になりました。
時代の変化を一番感じる国が、タイです。かつて宝石の国として名を馳せたタイは、宝石が枯渇するとともに国をあげて処理技術の推進に力を入れてきました。宝石関係者にとって、タイはいまや宝石の産出国ではなく、処理と取引の国になっています。
近年、コランダムの中で特にとれなくなっている濃い赤系の美しいルビーも、処理石であればタイで安価に入手できます。ほぼ近い色の大粒を簡単に複数揃えることができるのです。
希少とされるパパラチアサファイアの専門店も、タイではよく見かけるようになりました。大粒で美しいさまざまな色のパパラチアサファイアを使ったジュエリーが所狭しと並んでいます。販売前に処理石と公表している誠実な業者もいますが、大半のお店はそうではありません。鑑別会社によっては検査できない、また検査しても見抜けないところがあるので、処理石が世に増えるのは仕方がないのかもしれません。
パパラチアのベリリウム拡散加熱処理も、かつて回収騒ぎになった時代より格段に進化しています。オレンジよりからピンクよりまで、ありとあらゆる色の処理済みパパラチアが作られているので、タイに行けば近い色の大粒を複数、けっこう簡単にそろえられます。ベリリウム以外の処理もあり、今はどこまで本物と鑑別されるか、その精緻を競う時代になっています。
そして世の中には、綺麗ならば安価な処理石でいいというお客様がいらっしゃるのも事実です。どんな産業も需要があるから発展していく。つまり、価値のない石を綺麗にする技術は今後もさらに進化し、処理石は世界中でどんどん増えていくということです。
ですが、本当に宝石が大好きで、本物にこだわるお客様がいらっしゃることも事実です。SHA CEYLON楽天市場店ではそういうお客様のために、仕入れ時にたとえGIAの鑑別書がついていても、それだけでは本物と認めません。自分たちから直接、GIAに検査を依頼し直す等、信頼できる鑑別機関で鑑別にかけ、お客様には商品と一緒にその鑑別書をご覧いただけるようにしています(GIAの鑑別書では、処理済みのサファイアの場合、どんな処理がされているかコメントとして表記されます)。
これからも本物を愛するお客様のために、私たちは自らが本物と確認した宝石をお届けしてまいります。
 
 

赤系の濃い大粒ルビーは近年さらに希少になり、価格も高騰しているので、処理石の中でも大人気。処理方法もさまざまで、その精度は年々上がっています。タイのマーケットには多彩な色や大きさの処理済ルビーが並び、これら処理済みの天然石はこのまま、あるいはタイ国内で研磨され、世界中へと運ばれていきます。

処理済みのルビーに本物(非加熱または通常加熱のルビー)としての価値はなくても、大半の鑑別会社が「天然ルビー」と記載するので、店頭では宝石として普通に出回っています。GIAに色石の鑑別を依頼すると基本検査で処理の有無を調べるので、処理がされた宝石はコメントで記載されますが、鑑別書の検査内容は鑑別会社によって違います。鑑別書があるといいながら見せない、今はないが後からとれるというお店は、なぜか最初のお話が二転三転することが多いです